文盲という劣等意識は、そんなにも人に知られたくない恥ずかしいことなのかと驚いた。

 
DVDとBlu-rayと原作本です。

『愛を読むひと』(原作『朗読者』)という洋画を借りて観た。
ネタばれになるがストーリーの要点だけ紹介します。
(ケイト・ウィンスレットが老けていく過程がおもしろい。名演)

ケイト扮するハンナ・シュミッツと
15才の主人公ミヒャエル・ベルクは
ひと夏の関係を持つ。
物語が好きなハンナはミヒャエルに本の朗読をお願いし、
二人の仲は親密度を増してゆく。
ある時彼女は彼の前から姿を消す。
(理由は昇進して事務職を任せられることを嫌がったからだ)

ハンナにはナチス親衛隊として働いた
血塗られた過去がある。
ミヒャエルと別れて数年後、
ハンナは法廷に立たされ、
筆跡を調べられるために、
紙とペンを渡される。
彼女は文字が書けない読めない文盲であることを
人に知られたくないために、
裁判で不利な証言をしてしまう。
「無期懲役」の判決が下る。
その法廷をたまたま傍聴していた
今や法学生となったミヒャエルは、
彼女の文盲を知っていた。
救えるはずのハンナを見過ごしにしたのだった…

罪の意識からかミヒャエルは牢獄のハンナに
かつて読んで聞かせたテープを送る。
それをきっかけに彼女は“文字”を学ぶようになる。
少しずつ文字を理解するようになり、
その喜びと共に彼に短い手紙を送る。
時に「返事がほしい」という手紙に
彼は手紙を送らない。
送るのは本だけだ。
いよいよ出所も近いという日に
ミヒャエルはハンナを迎えに行くと約束したが、
ハンナはその夜自殺する。

「なぜミヒャエルは文字を理解し始めたハンナに手紙を送らなかったか?」

ハンナは文盲だった自分を恥じていた。
彼は刑務所内の彼女の“文字”の理解度を知らない。
もし高等な文を書いて理解してくれなかったら
彼女のプライドを傷つける。
もし幼稚な文を書いて送れば
これもまた彼女のプライドを傷つける。
ミヒャエルはかつて愛した人を思いやり、
送るのを拒否したのだ。

「若かりし頃の主人公が、なぜあの時文盲だと証言しなかったのだろうか?」

二人のあの夏の関係の中で育まれた
二人だけの『絆』が思い出と共によみがえり、
これも彼女への思いやりから
真実を公然にしてしまうのを拒否したのだろう。
(時として真実は人を傷つけるのだ)

思春期の青年が夢見る永遠の恋。
ドイツ人の犯した罪の贖いと文盲という羞恥心。
寂しく孤独な現実と冷たく固い牢屋で交わされる二人の蜜月。
歳月という罰を受けながらも愛を感じ合った日々。
そんな甘く切ないラブストーリーです。

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